事業承継ガイドラインとは?概要についてわかりやすく解説

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  • 事業承継知識
  • 2022/01/07

事業承継ガイドラインとは?概要についてわかりやすく解説

総務省の調査によると、日本の全企業数のうち99.7%は中小企業が占めています。そのため、日本の産業は中小企業なくして成り立つことはできません。中小企業は大企業の生産を支える繊細な技術を持ち、地域社会の雇用を創出するなど重要な役割を担っています。

しかし、多くの中小企業では後継者不足が大きな問題となっており、政府もこれを重要視していることから事業承継に関わるガイドラインを策定しました。

この記事では中小企業庁が策定した事業承継ガイドラインの概要をわかりやすく解説します。

事業承継ガイドラインとは

事業承継ガイドラインは、経済産業省の外局である中小企業庁が、中小企業経営者の高齢化を踏まえて、中小企業の円滑な事業承継をサポートするために平成18年度(2006年度)に策定し、平成28年度(2016年度)に改訂したものです。今後も多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えようとするなか、事業承継ガイドラインを活用することによって、中小企業の事業価値を引き継ぎ、持続的な経済活動を手助けすることが目的です。

事業承継ガイドラインでは、計画的な準備の重要性・課題への対応策・事業承継支援体制の強化の方向性などについて取りまとめられています。また、後継者問題を抱える中小企業がより良い選択をできるよう、さまざまな情報も記載されています。今後の会社のあり方を考える中小企業経営者にとって、有益な指針と言えるでしょう。

事業承継ガイドラインが策定された背景

日本企業において大企業の占める割合は0.3%に過ぎず、99.7%が中小企業です。そのため中小企業の果たす役割は大きく、地域経済にとっても欠かせない存在です。

政府も中小企業の重要性を認識しており、蓄積されたノウハウや専門的な技術などの価値を次世代に受け継ぐべく政策を打ち出しています。その一つが事業承継ガイドラインの策定です。

事業承継ガイドラインは、中小企業が直面している後継者問題を背景に自国の産業の継続と発展を目的に策定された指針です。現状を分析した上で専門家から具体的な解決策を提示している他、円滑な事業承継ができず廃業に陥ってしまう中小企業が一社でも少なくなるようさまざまなアプローチも紹介されています。

事業承継ガイドラインの概要

事業承継ガイドラインには事業承継の際に起こり得る課題が具体的に記載されています。専門家の意見を反映しつつ網羅的な内容となっているため、平成28年度(2016年度)の改訂版は98ページの分量です。内容は大きく分けて以下の3つの構成で成り立っています。

1.事業承継に向けた早期・計画的な取組の重要性
2.事業承継に向けた5ステップの提示
3.地域における事業承継を支援する体制の強化

それぞれの項目に日々の業務の中で活用できるよう実務的な内容も盛り込まれています。ここではさらに細かく分類した6項目を解説します。

事業承継の重要性

事業承継が重要と考えられている理由について、ガイドラインに記載されているデータを元に考えてみましょう。2014年時点では日本企業における中小企業の割合は99%以上、従業員数は約70%を占めています。中小企業が日本の経済・社会の基盤を支えていることは明白で、雇用の受け皿としても重要な役割を果たしています。

一方で、1999年から2015年までの間に中小企業の数は約100万社減少しており、その後も減少傾向にあります。中小企業数が減っている大きな要因として挙げられるのは、経営者の高齢化と後継者不足です。経営者年齢のボリュームゾーンは、1995年は47歳前後でしたが、2015年には66歳前後にまで大幅に上昇しています。これは20年間でほとんど世代交代がされていないことの裏付けにもなっています。中小企業の発展と継続を実現するためには、スムーズな事業承継が必要不可欠だということはこれらの数値からも明らかです。

事業承継に向けた5つのステップ

事業承継に向けた5つのステップは以下のとおりです。

1.事業承継に向けた準備の必要性の認識
2.経営状況・経営課題等の把握(見える化)
3.事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
4-1.事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)
4-2.M&A等のマッチング実施(社外への引継ぎの場合)
5.事業承継の実行

事業承継に向けた準備は、引退のタイミング等を考慮すると、経営者が概ね60歳に達した頃に実施することが望ましいとされています。中小企業の場合、経営者の親族を後継者として選ぶことが多いため事業承継の問題をそのまま家族内の課題として認識してしまう傾向にあります。

しかし、親族を後継者に考えている場合でも、親族各自の職業選択の自由を尊重する考え方の広がりや、自社の将来性の不透明感など、事業承継に伴う様々な不安が解消されるわけではありません。そのため、早いうちから専門家の意見に耳を傾けることで事業承継の選択肢は大きく広がるでしょう。事業承継や経営について相談できる専門家を見つけ、事業承継に向けた準備をしっかりと行うことが重要です。

次に自社の経営状況や経営課題を把握します。売上や利益などの数値だけでなく、今後の成長性まで分析し、見える化することも大切です。専門家に依頼することで社内とは違った視点で会社の強みや弱みを知ることができます。

そして現状の把握ができたら、事業承継に向けて経営改善を行います。相続税などの目先の損得に捉われず、より良い形で次の世代にバトンを渡せるよう最善を尽くしましょう。

事業承継は大きく分類すると「親族内承継」と「親族外承継」「M&A」の3つの方法があります。それぞれで必要な準備や活用できる補助金も異なるため、方向性はできるだけ早く決められると良いでしょう。

最後は事業承継の実行です。中小企業庁からも支援策が提供されているため、自社で活用できそうなサポートの情報は積極的に収集していきましょう。

事業承継の課題と対応策

先述した通り、事業承継には以下の3種類の方法があります。

・親族内承継
・親族外承継
・M&A

それぞれの課題と対応策を見ていきましょう。

まず、親族内承継は他の2つと比較すると、税負担への対応や株式・事業用資産の分散防止、債務の承継への対応に関して課題が発生しやすい傾向にあります。事業承継税制(相続税)を活用することで大きな税負担を軽減できる場合があるように、税理士などの専門家に相談しながら必要な支援策を探すと良いでしょう。

親族外承継では、株式・事業用資産の承継は有償譲渡によるものが多く、その際、後継者による資金の確保が課題として挙げられます。対応策としては、金融機関からの借入れの他、後継者候補が従業員である場合は、役員報酬の引き上げなども有効です。

M&Aは、その成立自体をゴールとするのではなく、買い手と統合した後の経営を軌道に乗せることも課題の一つです。売り手の旧経営者が一定期間、何らかの形でアドバイスできるような環境を構築することも良いでしょう。

事業承継の円滑化に資する手法

円滑に事業承継を実現する上で役に立つ手法として、事業承継ガイドラインでは以下の4つが紹介されています。

・種類株式の活用(株式分散の防止)
・信託の活用(後継者への確実な承継)
・生命保険の活用(納税資金の確保)
・持株会社の設立(株式分散の防止)

種類株式の活用は、後継者に普通株式を、その他の相続人には無議決権株式を相続させます。これにより株式(議決権)が分散するリスクを軽減させることが可能です。

信託の活用は、遺言代用信託が挙げられます。これは事業承継で活用できる信託の典型で、先代経営者の遺言に代わる手法として注目されています。

生命保険の活用は、先代経営者の死亡保険金の受取り先を後継者とすることで、税優遇が受けられたり、納税費金を準備したりできます。

持株会社の設立は、後継者が持株会社を設立し、事業会社からの配当を前提として金融機関から融資を受け、この資金によって先代経営者から株式を買い取る方法です。この場合、先代経営者は株式譲渡の対価として現金を受領します。先代経営者死亡時には、株式ではなく現金で相続できるため、株式分散の防止というメリットがあり近年増加傾向にあるスキームです。

個人事業主の事業承継

個人事業主の事業承継でも、概ね会社形態と似たような課題があります。ただし、個人事業主は経営が個人に依存しているため「人の承継」と「資産の承継」が深い関係性を持っています。

平成28年度(2016年度)の事業承継ガイドラインによると、個人事業主の81.1%が父親もしくは母親が先代経営者をしており、親族内承継も含めると約90%という高い数値となります。そのため、個人事業主の場合は親族内承継を前提に準備を進め、後継者候補が「事業を承継したい」と思えるような経営状態を確保することが重要です。

また、店舗兼住宅の形態を取る個人事業主の場合は、事業用資産と併せて経営者の個人資産の承継についても手続きを行う必要があります。

中小企業の事業承継をサポートする仕組み

中小企業庁は事業承継ガイドライン以外にも中小企業の事業承継をサポートするさまざまな仕組みを設けています。中小企業にとって身近な支援者となるのは、所属している商工会議所・取引のある金融機関・顧問税理士などの専門家が挙げられます。事業承継に関して専門的なサポートを望むのであれば、認定経営革新等支援機関・中小企業診断士・弁護士などに助言を求めても良いでしょう。

国の支援機関は、再生支援協議会・事業引継ぎ支援センター・中小企業基盤整備機構などがあります。

2021年度内に事業承継ガイドラインを改定する可能性も

中小企業庁は、中小企業の円滑な事業承継を推進する「事業承継ガイドライン」を2021年度中に改訂する見通しです。2021年9月1日に有識者による改訂検討会が開催され、具体的な論点も確認されました。

2021年度の改訂では、主に新型コロナウイルスの影響なども踏襲した内容が追加される見込みです。また、事業承継税制の活用ペースが鈍化しているという課題や、後継者不在率も高止まりを続けている現状を踏まえ、状況変化を反映させた改訂版を策定することになります。

事業承継ガイドラインの活用について

中小企業庁は事業承継ガイドラインとは別に、以下の2つの資料を公表しています。

・事業承継マニュアル
・事業承継ガイドライン20問20答

どちらも専門的な用語が散見される事業承継ガイドラインを分かりやすくまとめなおした資料です。

事業承継マニュアルは、事業承継ガイドラインとほぼ同じ内容を図表やイラストで簡潔に解説しています。事業承継ガイドライン20問20答は、質問形式で事業承継計画の立て方や資金調達等の課題への対策について学べます。

事業承継ガイドラインを読む前に、これら2つの資料を読むことで事業承継の概要が掴めます。理解を深める意味でも、事業承継ガイドラインと併せて目を通してみましょう。

まとめ

事業承継は早いうちから検討・対応を進めておくことが大切です。まずは事業承継ガイドラインに沿って自社の分析や事業承継のための準備を行っていきましょう。

準備を進めていくうえで不安な点があれば、事業承継やM&Aを専門に扱うアドバイザーに相談するのがおすすめです。中小企業では事業承継を家族の問題として捉えるケースが多いですが、専門家に相談をすることで今後の選択肢を広げられます。GCAサクセションでは、中小企業の事業承継に関して、承継先のご相談から第三者へ承継する際の承継先の選定、書類作成など、トータルでサポートを行っております。

さまざまな支援策を活用しながら、企業の持続的な成長を目指しましょう。

記事監修

GCAサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。経営理念に「For Client’s Best Interest (クライアントの最善の利益」を掲げ、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。

東証一部上場の独立系M&AアドバイザリーファームであるGCA株式会社のグループ会社であり、GCAグループ全体では世界12カ国に23オフィスを構え、全世界で600 社以上のM&A実績があります。

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