個人事業主が事業承継を行う方法や流れ、注意点とは?

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  • 事業承継知識
  • 2021/12/24

個人事業主が事業承継を行う方法や流れ、注意点とは?

個人事業主の事業承継は、法人とは異なる手続きの方法や流れになるため注意が必要です。個人事業主の場合は元の事業主と後継者、それぞれが手続きを行わなければなりません。また、事業承継の方法には売買(M&A)、贈与、相続・遺贈の3種類があり、手続きにも違いがあります。

この記事では個人事業主が行う事業承継の方法や流れについて詳しく解説します。納税が猶予され負担軽減につながる「個人版事業承継税制」などについても説明しますので、ぜひ参考にしてください。

個人事業主が事業承継を行う方法

商売や個人経営店などを営んでいる個人事業主が事業承継を行うには、主に以下の3つの方法があります。

・売買(M&A)
・贈与
・相続・遺贈

売買(M&A)は事業用資産を後継者や第三者に売却する方法です。贈与は現経営者が後継者に無償で事業用資産を引き継ぎます。相続・遺贈は、個人事業主が亡くなってから相続などで事業用資産が後継者に移るものです。

事業承継の方法ごとに、それぞれ異なる税金が掛かります。個人事業主が贈与または相続・遺贈で事業承継する場合には、個人版事業承継税制が適用されます。これは、贈与や相続などの際に掛かる贈与税や相続税が納税猶予される制度です。要件を満たせば税金が猶予されるため、事業用資産が多額になるケースでは検討すべき制度と言えます。

売買(M&A)で事業承継する

売買(M&A)による事業承継は、事業用資産を売却して売却益が得られる方法で、主に第三者に譲渡するものです。現在の個人事業主が得た売却による利益に対して所得税が課せられます。

売買(M&A)による事業承継事業では、一部または全部の売却額を決めるために、売却先と価格交渉を行います。自身が行っている事業の市場価値の相場を知るには、事業資産や負債の評価額を的確な根拠のもとに算出します。

事業規模が小さいと売買が難しい場合もあるため、マッチングサイトの利用や事業引継ぎ支援センターに相談する方法もあります。ただし、公的機関では相談のみで売買(M&A)の仲介は行っていないため、会社の個別事情に応じて適切なM&Aアドバイザーを紹介いただくとよいでしょう。

贈与で事業承継する

贈与による事業承継は、現在の個人事業主の事業資金に余裕がある場合の他、後継者の資金が少ないケースなどに多く行われる手法です。贈与による事業承継には、親族内事業承継と親族外事業承継の2つの方法があります。

子どもなど事業主の身内に事業承継する親族内事業承継は、従来多く行われてきたため事業関係者にも抵抗なく受け入れられやすい方法です。早い時期から後継者を決めることができ、経営者としての教育や事業承継の準備に時間を費やせます。また財産などを事業承継時に併せて移転することも可能です。一方で、身内に適任の後継者が見つけにくい点、相続人が何人も存在すると後継者選びが難しい点はデメリットと言えます。

従業員など身内以外の人材に事業承継する親族外事業承継の場合は、身内に限らない幅広い選択肢から後継者が選べる点がメリットです。事業所に長く勤務している経験の豊富な従業員を選ぶなら、将来的にも安定した経営が期待できるでしょう。

デメリットは、事業承継に値する人材が見つからない可能性があることや、後継者の資金不足で株式取得が難しいケースもあることです。また、負債も引き継ぐことになるため、後継者の負担が大きくなる可能性もあります。

相続・遺贈で事業承継する

個人事業主が亡くなったために相続・遺贈で事業承継する場合は、後継者に相続税が課せられます。相続、あるいは遺言による遺贈で、元の事業主から後継者へ事業用資産などが移る事業承継の形です。

遺言があれば何をどのように相続させるかなど記載されているため、資産や自社株について遺言に基づく財産分割が行われることが一般的です。遺言書がない場合は、誰が何をどのように相続するかを話し合い、その結果を基に遺産分割協議書を作成します。

ただし、遺言書がないと元の事業主の意思が確認できないため、話し合いがスムーズに進むとは限りません。相続・遺贈で事業承継をする場合は、個人事業主が生前に遺言書で自らの考えを明確に示しておくことが大切です。

個人版事業承継税制とは

個人版事業承継税制は、個人事業主が事業承継時に課せられる税金が猶予される国の制度です。個人事業主の税負担をなくすことで、事業承継のさらなる推進を目的に創設されました。個人版事業承継税制は、贈与または相続で事業承継した場合に適用されます。

税金が猶予される事業用資産は、土地や建物の他、事業に必要な機械・備品、車など多様な物が対象となります。猶予されていた贈与税や相続税の納税は、個人事業主が死亡したときに全額免除される仕組みです。個人版事業承継税制には10年間の期限があり、2019~2028年に行われる相続・贈与される事業承継が適用されます。

個人版事業承継税制による納税猶予を受けるには、事業承継を始める前に都道府県知事に個人事業承継計画を提出し、認定されなければなりません。青色申告を行っていた個人事業主の後継者が中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に基づく認定を受け、一定の要件を満たせば納税が猶予されます。

ただし、事業承継後に納税猶予の要件を一つでも満たせなくなった場合は、すぐに猶予されていた納税額を全額納めなければならない点には注意が必要です。例えば、後継者が事業を継続できずに廃業するなどのケースがあります。

個人事業主が事業承継を行う流れとポイント

個人事業主の事業承継は法人とは異なり、事業承継を行った経営者が廃業手続き、後継者は開業手続きをそれぞれ行う必要があります。法人は経営団体そのものに人格が与えられているため、事業承継で筆頭株主や経営者が変わっても同じ納税義務者です。

しかし、個人事業主の場合は個人が行ってきた事業のため、承継する人と後継者は同じ事業でも個々に納税義務が発生します。ここでは、法人の場合とは異なる個人事業主の事業承継について、主な流れやポイントを解説します。

事業承継の流れ

個人事業主が事業承継を行う基本的な流れは以下の通りです。

①後継者の選定:身内や第三者から後継者を選ぶ
②引継ぎ・教育:事業がスムーズに継続されるために後継者教育や顧客関連の引継ぎを行う
③廃業手続き:元事業主が廃業手続きを行う
④開業手続き:新事業主が開業手続きを行う
⑤屋号引継ぎの処理など:元の屋号引継ぎ処理を行い開業届に記載する
⑥取引先や顧客への連絡:新事業主が取引先などに挨拶する

個人事業主の事業承継では、元の事業主と承継者、それぞれの手続きが異なる点がポイントです。元事業主は廃業手続きを終えれば、後は手続きをする必要はありません。開業手続きからは、新事業主が手続きを進めていくことになります。

元事業主(承継する人)が行う手続き

元事業主は、事業廃業届出書を税務署へ提出します。書類の形式や提出期限などは、都道府県によって異なるため、よく確認してから手続きを行いましょう。元事業主の場合は、廃業手続きの他に所得税や消費税に関する手続きも必要です。

元事業主が青色申告で確定申告を行っていた場合は、「所得税の青色申告のとりやめ届出書」を税務署へ提出します。届出書は事業を廃止する年の翌年3月15日までの提出が必要です。賃貸アパートなど不動産収入がある場合は事業を継続するため、取りやめる必要はありません。

消費税に関する手続きは、簡易課税制度を受けていた場合は「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を税務署へ提出します。免税事業者でも課税事業者として届出をしていた場合は「消費税課税事業者選択不適用届出書」を税務署へ提出することになります。なお、消費税に関するこれらの書類に「事業廃止の旨」と記載すれば事業廃止届出書を提出する必要はありません。

新事業主(承継者)が行う手続き

新事業主となる承継者は、事業を始める日から1カ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄の税務署に提出します。

所得税に関する手続きでは青色申告承認申請書を、青色申告を行う予定の年の3月15日までに税務署に提出します。ただし、1月16日以降に事業を始めた場合は、開始日から2カ月以内が提出期限です。

「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」は、専従者給与額を確定申告に算入する予定の年の3月15日までに提出します。1月16日以降の開業や専従者が増えた場合は、開業日や専従者が加わった日から2カ月以内です。

消費税に関する手続きは、「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。これは免税事業者が新たに購入した事業用資産などで消費税の還付を受ける場合に提出するものです。また、簡易課税制度を選ぶときには消費税簡易課税制度選択届出書が必要です。どちらの書類も、課税期間中に所轄の税務署に提出します。

個人事業主の事業承継における注意点

個人事業主の人が事業承継を検討している場合は、対応の時期や税金対策には特に注意が必要です。

事業承継で重要な後継者選びや複雑な手続きを考慮すると、何事も早めに対応する方が良いでしょう。適任の後継者はすぐに見つかるものではなく、選んでからも一定の教育期間が必要です。早い時期に選択が難しいと判断できればM&Aによる承継への変更も視野に入れられます。個人事業主の事業承継では、開業と廃業手続きが必要になるなど手続きが煩雑です。書類の提出にも期限があるため、早めに進めなければなりません。

また、事業承継後には贈与税や相続税、所得税、消費税のほか、固定資産税や都市計画税も課せられるため、税金対策をしておくことも大切です。元の事業主が残した借入金があれば後継者が引き継ぐことになります。税負担を軽減するには、個人版事業承継税制の利用や、元事業主が生命保険に加入して受取人を後継者にする方法、相続税よりも税負担の少ない生前贈与を実行するなどの対策がおすすめです。

まとめ

個人事業主の事業承継では、元事業主は廃業手続き、後継者は開業手続きをするなど、手続きが多いことが特徴です。法人の場合は企業が一つの人格として国に認められますが、個人事業主は経営者が変わるため手続きが複雑になります。

個人事業主の事業承継には、売買(M&A)、贈与、相続・遺贈の3つがあり、手続きや課せられる税金はそれぞれ異なります。税金が多額になる場合は、個人版事業承継税制を活用し税負担を軽減することも可能です。しかし、一つでも要件を満たしていないと判断されたときには、猶予分を一括で支払う可能性もあります。

記事監修

GCAサクセション株式会社は、オーナー様企業における事業承継案件に特化した代理人型M&Aアドバイザリー会社です。経営理念に「For Client’s Best Interest (クライアントの最善の利益」を掲げ、オーナー様専属のアドバイザーとして、クライアントのご意向に沿ったM&Aの実現を徹底的に追求いたします。

東証一部上場の独立系M&AアドバイザリーファームであるGCA株式会社のグループ会社であり、GCAグループ全体では世界12カ国に23オフィスを構え、全世界で600 社以上のM&A実績があります。

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